2012-07-29

crash




あの朝、今となっては驚くほどではないような、それは未成年の犯行ではなく、通り魔でもなく、想像のつく範囲内の方法で、子が親を殺したわけでもなく、親が子を抹消したわけでもなく、誰かが第三者の手にかけられ捜査が難航したわけでもなく、そして冤罪でもなく、至極一般的な、相手をどうしようもなく憎んだ末、殺すべきだから殺した、というニュースを見た祖母が、真っ白なヨーグルトに多すぎるほどのブルーベリージャムを放り込みながら、「日本は一回滅びるべきなのよ」といつもの口調で小さく呟き、同じ食卓を囲んでいた祖父や両親は余計な口を叩いて祖母を刺激しないようにという配慮のもと閉口し、ただニュースが終わるのを待っていた。わたしは今でもたまに思い出す。咀嚼する音が妙に響き、女子アナウンサーは薄っぺらい笑顔で媚び、くだらないコマーシャルが時間を消費し、誰もが祖母が普通の世間話をし始めるのを待っていた。薄紫色になったヨーグルトの色がひどく気持ち悪く、所々浮いている粒がひからびた虫の死骸のように見え、その甘くゆるいペーストを目を反らしながら口に運んだ。 確かあれは、十四年前の夏。