2013-03-19

It’s boring here,pick me up.




「ここは退屈迎えに来て」/山内マリコ

地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。 フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、 「R-18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。



いったい、こんな完璧なタイトル、どうしたら思いつくのだろうか、というのが一番最初の感想です。 おかげで手を出すタイミングを失った、それだけが理由じゃないんだけど、初めてブックデザインを見たときの衝撃といったら、なんだこのレトロにハイセンス溢れた本は!と更に買うのを躊躇したのでありました。

気後れした一番の理由はわたしもれっきとした“地方ガール”だからです。 東京に憧れて、というか当然のように自分は東京に行くのだと信じていて、一応反対というか言い宥められたような気もするけれど、心はもう東京にいたので聞く耳を持たなかった18歳の頃。 東京で生活することがもう当たり前で、今日に至るまでそれなりに色々あったにしても、どんな状況に陥っても地元に帰るという選択肢は未だに出てきたことがない。意地なのかな。わからないけど。でもここにいたい。

地元にいた頃、何を考えてどう暮らしていたのかがまず思い出せないし、これから帰ったとしたらどのような生活をするのだろうかを想像することがむつかしい。だから“一度は上京したけれど舞い戻った地方ガールの話”と言われてもナァ、と思っていましたがとりあえず読んでみることにしました。

それにしてもこのタイトル、相当好きなんです。「ここは退屈迎えに来て」だなんて思っていてもあんまり口に出せない。現状にちっとも満足していなくて、人生なんて受け身じゃ何も始まらないんだから、とひとしきり頑張ってみたりしてもふと虚しくなって、おとぎ話みたいに誰かさらって住民税とかない夢の国へ連れて行ってくれないかな、とか実はどこかで思ってたりするんです、多分。でもそんなこと言い出したらキリがないし妄想は膨らめど手元には何も残らない。あれだけ憧れた東京にいるのにそんなのは納得がいかないから、やっぱり自分で居場所を見つけたいと奮い立たせていても、たまにね。そんな隠し持っている気持ちを華麗にくすぐる秀逸なタイトル。

わりとよくあるようなイマドキな小説かなと出だしは思ったけれど、最後まで楽しかった。最初から最後まで楽しいなんて滅多にない。それに本を読んだというよりは映画を見たっていう気持ちになった。 読み終わって“わたしも地方でがんばろうと思いました!”的なことは一切ないし、“東京にいるわたしバンザイ”でもない。かといって地元の友達の話をただ聞いてたという感じもしなくて、なんというか作者のテンポとセンスのよさったら!やっぱりこのタイトルつけた人だなーと恐れ入ったわけです。

このふわっとした心地良さを例えるのなら、青信号ばかり続くドライブとか、電話かけようとしたらかかってきたとか、電車の乗り継ぎがいいタイミングで出来たとか、なんかそういえば今日調子いいかも、みたいなのが近いかもしれないな。

それにしても、いいタイトル。 ため息ついちゃう。

It’s boring here,pick me up.